石川建築賞

第45回受賞作品

優秀賞【一般建築】

作品名(建築物名称) 明治安田金沢ビル
所在地 金沢市
建築主 明治安田生命保険相互会社
設計者 大成建設株式会社一級建築士事務所
施工者 大成建設株式会社北信越支店

金沢市の顔とも言える百万石通りに面したオフィスビルである。市内に分散した営業所を集約するための建て替えであり、その背景にはオフィスワークの大きな変化がある。こうした要請に対し、平面をコンパクトにまとめながら極めて解放的な空間が提案されている。金沢では町家から着想を得た木格子は必ずしも珍しくないが、抜け感のあるファサードは百万石通りに新たな景観を作り出している。その一方で、基礎免震とRC壁式構造を組み合わせて高い構造安全性を確保しつつ、着実な環境・設備計画によってZEB Readyを取得している。さらに1階に設けられた無料貸し出しスペースは、金沢で140年間ほど活動を続けてきた施主の心意気を示している。以上、各種計画が高度なレベルで融合しているだけでなく、金沢の中心市街地に優れた景観と賑わいを作り出す取り組みが高く評価され、優秀賞の受賞となった。
(選評:佐藤 考一)

入選【一般建築】

作品名(建築物名称) Hirooka Terrace
所在地 金沢市
建築主 株式会社北國銀行
設計者 株式会社三菱地所設計
施工者 清水建設株式会社北陸支店

金沢駅西側のけやき大通り沿いに建つテナントオフィスビルである。内部と外部、共用部と専有部、既存本店ビルと新築棟、上下階の関係など、様々な境界を閉じるのではなく、「あいまいな境界」として丁寧に設計し、緩やかなつながりを実現している。従来の大きな専有部を確保する効率優先型オフィスとは異なり、大らかな共用部や半外部のテラス、吹抜や階段による立体的なつながりにより、人々の偶発的な出会いや協創を促す場を生み出している。また、地元産材である能登スギの活用、地震の記憶を建築に留める試みも、地域の資源や記憶を空間に受け継ぐ姿勢として評価できる。延床面積20,000㎡を超える大規模テナントオフィスビルでありながらNearly ZEBを実現した環境性能も特筆される。都市性、公共性、環境性能、空間の質を高い水準で統合した作品として、入選にふさわしい。
(選評:豊島 祐樹)

入選【一般建築】

作品名(建築物名称) KAJI FACTORY PARK
所在地 かほく市
建築主 カジレーネ株式会社
設計者 株式会社浦建築研究所
施工者 株式会社トーケン

私たちが身につける衣類は、どのように作られているのか。そんな問いに応えてくれるのが、内灘丘陵に建つ「KAJI FACTORY PARK」である。見学通路、自社アパレルブランドの直販ショップ、カフェを併設した産業観光施設兼工場で、周辺住宅地に開かれた場として計画されている。カフェでは地元食材を使った料理が提供され、平日昼間でも多くの人で賑わっていた。見学通路には繊維や生地について分かりやすく解説するサインが設けられ、衣類が生まれる過程を学ぶことができる。これらの産業観光機能を前面に位置することで搬入ルートが犠牲になったことは否めないが、それでも繊維が見えやすい黒塗りの塗装、生産ラインの効率化を考慮した軸線づくりなどの工業機能は配慮されている。定期的なワークショップやフェスティバルを通じて地域に親しまれ、「日本の繊維を元気にする」という企業の思いを体現する施設である。
(選評:西本 雅人)

入選【一般建築】

作品名(建築物名称) クリニックそら
所在地 小松市
建築主 医療法人社団S&BLOOMクリニックそら
設計者 h+ARCHITECTS
施工者 髙山木材・Rayhome特定建設工事共同企業体

本作品は、医療施設に求められる機能性を確保しながら、「そら」と「自然」とのつながりを丁寧に建築化した点が高く評価された。医療施設は閉鎖的になりがちであるが、大開口やハイサイドライト、中庭を効果的に配置し、光や風、季節の移ろいを室内へと柔らかく導き受診者の心理的負担を和らげる心地よい環境を実現している。また、建物を小さなボリュームの集合体として構成し、塀や植栽、庇によって住宅的なスケールへと分節することで、圧迫感を軽減し周辺市街地との調和を図っている点も秀逸である。さらに、北陸特有の気候風土を踏まえ、自然採光や自然通風を巧みに活用するとともに、高い断熱性能を備えた環境計画を実現している。深い庇や植栽帯による日射制御によって機械設備に過度に依存しない設計姿勢など、サステナブルな建築としての完成度も高い。地域の日常風景に溶け込み、人と自然を穏やかにつなぐ建築と非常に優れた建築である。
(選評:宮下 智裕)

入選【一般建築】

作品名(建築物名称) THE TERRACE SAIGAWA
所在地 金沢市
建築主 株式会社ユナイテッドオフィス
設計者 株式会社R.E.A.D
施工者 株式会社豊蔵組

犀川沿いに建つ小規模集合住宅である。敷地東側にかつて存在した路地を復活させ、地域住民が自由に通り抜けられるようにしている。また、前面道路側では駐車台数を抑えてポケットパークとベンチを設けるなど、集合住宅でありながら地域に開かれた公共性を生み出している点が高く評価された。テラスや中央の外部階段は、犀川沿いの景観の一部となりながら、入居者にとって心地よい居場所を生み出している。特に、夜間に室内の光が外へにじみ出ることで、川沿いの風景に奥行きと温かみが生まれている。共用ラウンジや共用ルーフガーデン、半地下を活用した駐輪場などの共用空間も、日常的な利用を支える場として丁寧に計画されている。要素を抑えた端正な意匠により、犀川沿いという立地を活かした都市的な暮らし方と地域への開放性を両立した作品として、入選にふさわしい。
(選評:豊島 祐樹)

入選【住宅建築】

作品名(建築物名称) カミヤチステアハウス
所在地 金沢市
設計者 株式会社秋元建築設計室
施工者 工務店大地

金沢市神谷内の閑静な住宅地にある、25坪の角地に建つ延床約30坪の個人住宅である。限られた容積の中で、3棟構成とスキップフロアを採用している。隣接棟の軒梁レベルに棟梁を揃えて水平力を効率よく伝達し、下階構造を吊り上げることでピロティ状の駐車スペースを確保している。室内環境では、エアコンと温度差による垂直方向の空気移動に、両妻面の時間交代型全熱交換器と階段室の送風ファンによる水平方向の移動を組み合わせ、スキップフロア特有の空間構成に対応した空調システムを構築している。また多様なフロア高さを活かし、周辺環境との距離感が調整され、設計・施工の連携により造作家具の細部まで創意工夫が行き届いている。
結果として、3棟・8層の空間を縦横につなぐスキップフロアとスリット状の階段室が、人と空気、熱、音、視線の循環を生み出し、小規模住宅でありながら身体的な開放感を実現している点が高く評価された。
(選評:内田 伸)


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