石川建築賞

第43回石川建築賞石川建築賞の募集について

募集要項等はこちらをご参照ください。

第42回石川建築賞受賞作品

令和4年度第42回石川建築賞に対し応募いただいた 20作品から審査の結果、入賞した作品と審査員選評を紹介します。 

優秀賞【一般建築】

作品名(建築物名称) 石川県立図書館
所在地 金沢市
建築主 石川県
設計者 株式会社 環境デザイン研究所
施工者(建築) 清水・豊蔵・表・寺井・双建特定建設工事共同企業体
トーケン・ムラジ建設特定建設工事共同企業体
岡・長坂特定建設工事共同企業体
橘・兆建特定建設工事共同企業体
和泉・大日土建特定建設工事共同企業体
(株)岡組
施工者(電気設備) 第一電機・成瀬電気・ムラモト特定建設工事共同企業体
柿本・ツボ・柴特定建設工事共同企業体
施工者(空調設備) 菱機・三谷・松下特定建設工事共同企業体
柿本・第一電機・山森特定建設工事共同企業体
施工者(給排水衛生設備) 鈴木・みなみ・ホクトー特定建設工事共同企業体
施工者(自家発電設備) 米沢電気工事(株)
施工者(展示工事) (株)トータルメディア開発研究所

中心部にグレートホールと呼ぶ円形劇場のような吹き抜けの大空間に段状の閲覧スペースを配置した地下1階地上4階階建ての構成で、文化交流エリアを充実させることを重視した旧図書館の2倍を上回る規模の建て替え計画である。
游環構造の原則により集中と回遊を促すように多様な居場所を巧みにつなげ、だんだんと上階に行くほど奥行きとひろがりを感じさせる。
スムーズな誘導を可能にするサイン計画や、バラエティに富むエレメントをバランス良く照らすタスク・アンビエント照明、それらをラメラドームの屋根で覆ったおおらかな空間は多様な利用者が居場所を見つけて利用している。
ありきたりの図書館は作らないとした建築主の要望に、自由度の高い空間の提案とデザインで呼応し、知的な活動が展開できるアクティブな図書館を実現した設計者の実績を昇華させた作品である。
今後の運用が楽しみになる図書館建築の新時代を感じさせ、計画・構造・環境・地域社会と全てに高水準であると優秀賞に推薦された。(選評:道地 慶子)

入選【一般建築】

作品名(建築物名称) みやこわすれの宿 こおろぎ楼
所在地 山中温泉
建築主 有限会社 こおろぎ楼
設計者 谷重義行建築像景
施工者 北陸ミサワホーム株式会社

この旅館に限らず、伝統的に続く旅館では増築や改修が繰り返され、動線が複雑になったり現行法に適合しなくなることは珍しいことではない。
本計画の建物も130 年の歴史をもつ老舗旅館であり、増築を繰り返してきた旅館であった。設計者がまず行なったのはこれまでの改修履歴の整理であった。
避難経路・距離、防火区画、非常照明、各居室の採光・換気・排煙など曖昧になってしまった計画を再度見直して、検査済証を取得している。
改修だからといって見過ごされてきた点を設計者が関わることで精算しきった点は評価に値する。
崖地に立つ建物のさらに川沿いの場所にエレベーター棟が増築された。50t クレーンでようやく届く場所に鉄骨や EV を組み立てる施工難易度は今回の応募作品の中でも最も高かったのではないかと思われる。半露天風呂のある客室はこおろぎ橋とその渓谷美を邪魔しないように落ち着いたデザインとなっており、この敷地の主役が誰であるかをわきまえている。(選評:西本 雅人)

入選【一般建築】

作品名(建築物名称) 金沢実践倫理会館
所在地 金沢市
建築主 一般社団法人 実践倫理宏正会
設計者 竹中工務店名古屋一級建築士事務所
施工者 竹中工務店名古屋支店

本作品は早朝に集まるための集会場の建て替え計画である。
これまで必要以上の明かりの漏れをなくすため閉鎖的なファサードをもった建物であったとのことであるが、この建築ではファサードを覆う水平ルーバーと導光キャストガラスという新しい技術開発を核として、これまでにない光の取り入れ方に挑戦し、魅力的な空間を生み出している点が秀逸である。
外部ルーバーに設置された導光キャストガラスによって反射された光は室内に木漏れ日のように入り込み、さらに吹き抜けの内装に使用された反射素材によってうつろに増幅される様子はとても印象的であった。
また、立体的に配されたテラス空間の樹木や木質材料がこれらの光とともに映り込むことで柔らかで心地よい雰囲気を生み出している。新たなアイデアを徹底的なシミュレーションと技術開発によって、良質なデザインに昇華しているという点で、極めて高い総合力を感じさせる作品であると言える。(選評:宮下 智裕)

入選【一般建築】

作品名(建築物名称) ダイダン株式会社 北陸支店
所在地 金沢市
建築主 ダイダン株式会社
設計者 株式会社 プランテック
施工者 共立建設株式会社関西支店

築54年が経過した旧耐震基準の自社ビルの建て替え計画である。
伝統的な街並みのある尾張町にふさわしい外観とするために、隣接した駐車場を建物1階部分に取り込むことで通り全面に木質感のあるファサードを計画した。
日本建築に縁側があるように執務空間の周囲に回廊を配置する空間構成であり、これが計画・構造・環境の点で優れた効果を発揮していることが評価された。
計画的には周囲の回廊がファサードのデザインの自由度を高めており、構造的には回廊を鉄骨造の外壁耐火とすることで、ロ準耐とした建物内に木構造の執務空間を内包した。そして環境的には回廊が熱負荷のバッファーゾーンとなり、木製格子戸で調整することで快適な
執務空間を実現した。
空間構成の提案が地域・計画・構造・環境の全てに波及するように計画されてお
り、かつ木を活用することへの取り組みや技術的な実現性が素晴らしい作品である。(選評:西本 雅人)

入選【一般建築】

作品名(建築物名称) ピースフル大額 円樹
所在地 金沢市
建築主 シオタニ株式会社
設計者 株式会社 六角屋
施工者 株式会社 豊蔵組

近年、葬式のあり方が大きく変化しそれに伴い葬祭場の形も変わってきている。
この作品は、まちの小さな葬祭場のあり方を新しい建築形態から提案している点でとてもチャレンジングである。
まず印象に残ったのは、葬祭場とは思えない明るい葬祭棟と安置棟である。
ガラスを多用し外部の庭と連続させることで非常に開放的で自然を感じる空間となっており、一般的な葬祭場に見られる閉鎖的な箱空間とは対照的なものであった。
また、遺族が宿泊するリビング棟はまさに住宅を感じさせる空間で、自分の家から故人を送り出す雰囲気を作り出している点も共感した。
丁寧に植栽計画された前庭、後庭がコの字に配された 3 つの棟の距離感や風景を上手に演出している点も秀逸である。
住宅や店舗が混在する郊外で葬祭場とは一見わからない外観は、街並みに対して馴染んだものであった。
社会的な要求からこれまでの葬祭場の建築を変えていく試みとして大変魅力的な作品であると言える。(選評:宮下 智裕)

入選【住宅建築】

作品名(建築物名称) Branch house
所在地 金沢市
建築主 稲森 予人
設計者 KELUN
施工者 道場建設株式会社

設計者の自宅兼事務所である。
奥行き 42m ほどの細長い敷地の奥には、北斜面を介して金沢大学の緑地が広がっている。そうした風景を最大限に享受するため、この建物はラッパ状に広がったワンルームで構成されており、切妻屋根を直天井とするトンネルのような室内は、斜行する間仕切壁の効果も加わって実際の面積以上の広さを感じさせる。
シンプルな建物形状はモノシリックな外観を生み出しているが、こうした佇まいは竪羽目板張りに長尺板を徹底したからこその効果であろう。
その一方で、ダメージ加工の床材を用いた室内には、ミニマリズムがもたらすような息苦しさはない。
住まいが住み手の自己表現であるとすれば、この建物は設計者兼住み手のキャラクターを余すことなく表している。
以上、こうしたケレン味のない空間構成と建築表現が評価されての入選となった。(選評:佐藤考一)

入選【住宅建築】

作品名(建築物名称) 金石町家つなぎプロジェクト
所在地 金沢市
建築主 金石町家つなぎプロジェクト
設計者 北村陽子けんちくアトリエ
施工者 株式会社 夢工場

金石に建つ築80年以上を経過した町家の改修プロジェクトで、設計者自身を含む家族の住宅兼事務所である。
金沢では町家改修の際に復元的な改修を行うことが比較的多く、温熱性能や耐震性の向上が難しい場合もある。
設計者は今回の改修を「築80年の金澤町家の性能向上リノベーション」と位置付け、伝統的意匠の残す箇所を取捨選択しながら、コストと性能のバランスをとった改修を行った。限られた予算の中で、耐火性、耐久性、耐震性、省エネ性を大きく向上させ、現代的なライフスタイルを実現している。
このような改修方法が一般に広まることで、従来と違う新たな層が町家の購入・改修を考え、より多くの町家が未来へとつながっていく可能性を感じさせるプロジェクトである。
地域住民を対象とした珪藻土壁塗りワークショップの実施、町家改修記録をまとめた冊子を作成・配布など、企画面でも優れていたことが高く評価され、入選となった。(選評:豊島祐樹)


過去の受賞作品

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